天秤座

夜空に浮かぶ天秤座は、二等星以上の星がないため、すぐに見つけるのは難しいかもしれません。元々は蠍座のハサミの部分だったとされており、12星座の中では最も新しい星座です。

ギリシャ神話では、天秤座の由来である天秤は、正義の女神アストライアの持っていた天秤と言われています。
かつて黄金時代といわれていたころ、神と人は仲良く暮らしていました。諍いが起こると、アストライアが双方の魂を天秤にかけ、どちらが正しいか測り、争いを収めていました。甘言に騙されることなく真実を見抜くアストライアは、常に公正で公平でした。
そして時代は銀、銅の時代へと続きます。人はその間に収穫を覚え、金属を発掘し、文明や文化を発展させます。それに従い、物欲、嫉妬、独占欲が芽生え、争いが絶えなくなりついに戦争が始まります。他の神々は人間に嫌気がさし神の国へと去っていき、アストライアだけが残りました。しかし鉄の時代になるとさらに人心は歪んでいきます。人間に絶望したアストライアもついに地上を離れ、夜空の星となったのです。

争いを避け、誰にでも人当たりがよい天秤座。

正義の女神が、嘘に惑わされることなく、天秤を使って人と人との調整に努めたように、天秤座の人は誰とも公平に付き合おうとします。人と争うことを苦手とするため、人当たりがよい人が多いのも特徴です。人気者で人を立てるのが上手な天秤座の友人がいる方も多いのではないでしょうか。天秤座の人が他人に求めるのは調和の取れた関係です。特定の人だけとべったりせずに、誰とでもにこやかに話をすることができる社交上手な人が多いのが天秤座なのです。


新しい環境へ馴染もうとする臨機応変さを持つ。

天秤座の人は社会に適応することで、自分の可能性を模索し、世界を広げていこうとする性質を持っています。転校や、転職をしたとき、いち早く新しい環境に馴染み、自分の立ち位置を見つけ出そうとする臨機応変さを発揮するのは天秤座ならではの能力と言えるでしょう。


天秤座は風のエレメント。知性的であっても現実主義ではないのが特徴。

それでは占星術の観点から天秤座を見ていきましょう。
太陽の動きは年によって微妙に異なりますが、だいたい秋分の日の頃に天秤座に太陽が入ります。この期間に生まれた人が天秤座になるのです。昼が夜より短くなる境目のときで、その先には美しい紅葉や収穫の時期が待っています。芸術に親しみ、豊富な人脈との楽しいひとときを望む人が多い天秤座。人生の娯楽を大切にする天秤座に相応しい季節とも言えるでしょう。

占星術では12星座を火、地、風、水のエレメント(四区分)に分けます。天秤座はエレメントでは「風」に区分されます。風のエレメントは知性を表します。しかし風は感じることはできますが、実態がないもの。知性的であっても現実主義ではないのが風のエレメントの特徴です。
人から得た情報や知恵を大切にし、ロマンに満ちた夢を掲げます。現実に囚われることなく、知的で創造力に富むのが天秤座の魅力です。興味のある情報をどこまでも追求していくという特徴から、アーティストや研究者、学者にも適しています。


より多くの人との交流を望むのが天秤座の本質。

天秤座の支配星は美と愛の星、金星です。音楽やアートを愛してやまない天秤座の人も多いでしょう。お気に入りのインテリアを配した部屋で、好きな音楽を聴きながらのんびり時間を過ごす、そんな癒しの時間をなによりも大切にしているのが天秤座の人なのです。恋多き人も少なくはなく、愛し、愛されることに喜びを見出す星座ですが、公平さを大切にする、という天秤座の特性が彼らの恋愛を独特のものにしています。恋愛にのめり込む前に、愛する人と自分がそれぞれ心地よい関係を築いているか考えてしまう。フェアさを追求し、そして相手にもそれを求めます。多少の嫉妬心や束縛心はありますが、がんじがらめの愛情を求められるのは苦手な人が多いでしょう。

また天秤座は活動宮、不動宮、柔軟宮の3区分では活動宮(カーディナル)に分けられます。活動宮は文字通り、アクティブな性質を持っています。知性のエレメントと活動宮の特徴を持っている天秤座は好奇心旺盛。興味深い情報がもたらされるのを待つ前に、自ら動いて情報を探しにいきます。また天秤座のテーマは社会性、つまり対人関係です。より多くの人との交流を望むのは天秤座の本質とも言えるでしょう。会話の席では注意力を分散させ、あらゆる人の言動にきちんと対応しようとする社交上手の才能を持っています。学生時代の仲間、仕事関係の知人、趣味の仲間、スポーツを楽しむグループ・・・、色々な社交場所を持っていて、それぞれの友人を大切にしている、そんな人付き合いを好みます。


社会の中で自分を活かす方法を追求することが天秤座にとって大切なテーマ。

天秤座は十二星座の7番目にあたります。占星術では牡羊座から乙女座は「個人」の星座と言われています。それはここに属する星座にとって大切なことが、自分の存在をアピールしたい、認めてもらいたい、というように個人に関することだからです。
そして天秤座からは「社会」の星座となります。後半の6星座は社会の中でどう生きるかがテーマになるのです。そのトップバッターが天秤座です。

社会の中で自分を活かす方法を追求することが天秤座にとって大切なテーマです。天秤座の人は「他人」に非常に興味を持っています。相手をよく観察し、その深層心理を探ることでその人との上手な付き合い方を模索していくのです。天秤座の人が近づき過ぎない距離間を保とうとするのは、相手を見抜こうとする冷静さがあるからでしょう。また人に好かれることにこだわるため、洗練されたコミュニケーションを操る人も多く、オシャレ好きが多いようです。この冷静さとバランス感覚は人生にも反映されます。仕事で頑張った後は、娯楽もそれなりに楽しみます。恋もせず、仕事だけの人生を送ることは、とりわけ天秤座の人にとっては辛いことでしょう。

社交上手と名高い天秤座ですが、意外に頑固者が多いことも特徴です。今までにこにこしていたのに、この点だけは譲らないと意地を張る天秤座に困った経験がある人もいるのではないでしょうか。天秤座の人は秩序と公平さを大切にするので、それを逸脱した行為に関しては譲らないところがあるためです。特に美意識の高い天秤座は不摂生やセンスのない人やものに厳しい目を向けるところもあります。その価値観の幅を広げることができれば、真の社交人として人々に好かれ、社会の中でも重宝される存在になることができるでしょう。


正義
最後にタロットの話をしましょう。 占星術の十二星座はその特質から、タロットカードに紐づけられています。天秤座のタロットカードは「正義」。ステラタロットの「正義」のカードに描かれているのはブルーの服を纏った女性。片手には剣を、片手には天秤を手にしています。バランス、公平さを意味する天秤に加え、剣が表すのは情に流されない冷静さと決断力です。まるで裁判官のような厳しい表情をした女性です。
こう説明すると、公正、公平さは天秤座のテーマとも言われますから理解できるのですが、剣を見てみると、温和で人当たりのよいと言われる天秤座のイメージにしては少しクールな印象を受ける人もいるかと思います。
剣は別の意味では「知恵」を表します。ゆらゆら揺れる天秤を安定させるために知恵を使う、それは多くの人の中で、コミュニケーションや知恵を使いながら、上手に人と縁を結んでいく天秤座の才能を思わせるものではないでしょうか。

さて社交上手な天秤座ですが、天秤座の人は与えるだけでなく、相手からなんらかを得るギブアンドテイクの関係を目指します。親しくすることで知恵を得る、愛を注ぐことで愛されようとする、すべてのことにおいてフェアであろうとするのが天秤座の特徴とも言えるでしょう。ただし、天秤座の人は無用な争いを避けるため、誰にでも愛想よく振る舞い、決断しようとしない優柔不断なところもあります。正義のカードに描かれた剣を持った女性のように、惑わない決断力を持つことができれば、もっと魅力的に輝くことができる星座です。