ルクソール〜アスワン地区
〈エジプト〉

 

ルクソールのコラムの続きです。

 

|コムオンボ神殿

コムオンボ神殿は、ルクソール以南にある神殿群のうちのひとつ。
この神殿には、2つの入口があります。
神殿の正面から向かって右半分は豊穣の神であるワニ神ソベク、左半分はハヤブサ神ホルスに捧げられている、世界でも珍しい二重構造の神殿です。

ここでの見どころのひとつは、こちらの壁画。

妊娠している女性の出産シーンや、メスなど医療器具が、壁画いっぱいに描かれています。
古代エジプトの医療が、いかに進んでいたかがわかりますね。

また、こちらも古代エジプトの文明がいかに優れた技術を持っていたかがわかる遺跡。ナイル川の水が、井戸のように掘られた穴のどこまで来ているかがわかる装置、ナイロメーターです。

これを基準に、氾濫や渇水の予測をし、農作物への影響を判断していたようで、なんと、それをもとに税を計算していたとか。つまり、豊作が予想される時期には税は高く設定されていたのです。
なんと素晴らしい設備なのでしょう。社会としてのシステムがとても成熟していたことがうかがえますね。

こちらの壁画では、トト神とホルス神がアンク(木)の精油を皇帝にかけています。

これは、永遠の命を意味し、皇帝の力の象徴でもあります。
このころからすでに、精油の作り方を示す壁画があるのです。精油は私のライフワークにも縁が深く、とても興味深いものでもあります。

こちらの壁画では、左の2人の女性に注目。クレオパトラ二世と三世が描かれています。珍しい医療の壁画を始めとして、とても見どころの多い神殿です。ぜひ訪れてみて下さい。

 

|アスワン地区

ルクソールから少し足を伸ばして、アスワン地区を訪れてみましょう。
わたしがエジプトに赴くきっかけとなった「イシス神」の神殿をはじめ、多くの遺跡があり、見応えのあるエリアです。

 

|フィラエのイシス神殿

私が大好きな場所、フィラエ島にある、美しきイシス神殿です。

ダム建設による水没の危機を乗り越え、アブ・シンベル神殿の世界遺産化活動のおかげで、水上に移築されて、見ることが出来るようになった神殿です。
元々、イシス女神の聖地フィラエ島にあった神殿で、アギルギア島に移築されたのですが、現在ではこの島がフィラエ島と呼ばれているそうです。

私が大好きな、タロットの2番、女教皇の女神イシスが、優雅にいる場所でもあります。

こちらで見て頂きたい壁画は、こちら。
ハトホル神のお乳を、皇帝が飲んでいる様子です。

つまり、神の子という意味で、皇帝の威光を示すひとコマ。
しかしこちら、顔をえぐり取られています。
次のファラオの征服により宗教が変わると、それまでの偶像を破壊するといったことは、どの文明でも、いつの世でも、よくあること。


次の王様が来ると、前王の偶像を破壊したり、顔をとったりすることもあります。そういった歴史も垣間見られる、面白い壁画ですね。