聖なる子(イタリア)

聖なる子(イタリア)


博物館を思わせる丘の上の素朴な教会でホッとする時間を過ごす。

聖なる子


今回、まずご紹介するのは、サンタ・サビーナ教会。「真実の口」で有名なサンタ・マリア・イン・コスメディン教会の南側、アヴェンティーノの丘と呼ばれる小高い丘の上にひっそりとたたずんでいます。レンガ造りの質素な外観から私が感じたオーラの色は、深いグリーンでした。

聖なる子


5世紀の創建という教会の内部に入ると、確かにそこは重厚な宗教空間でしたが、私にはどこか古い博物館にいるような感覚を受けました。そして、その感覚は、気持ちをホッとなごませてくれるものでした。教会の近くにはオレンジの木の植えられた公園があり、展望台からのローマ市内眺めも素晴らしいものでした。

聖なる子



崇高な薄紫のオーラに彩られた教会での忘れられない画家との再会

聖なる子


サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会は、古代ローマの神殿パンテオンのすぐ東側にある教会。私がここで感じたのは、崇高な薄紫色のオーラ。外観は地味なものの、内部には美しい装飾がひろがり、聞けば、ここはローマ唯一のゴシック様式の教会だそうです。
この教会には、それほど予備知識がなく出かけたのですが、入ってみて驚きました。私自身にとって大切な画家、フラ・アンジェリコのお墓がそこにあったのです。

聖なる子


15世紀に活躍したこの宗教画家の名画「受胎告知」をフィレンツェで見た時、そこに描かれた天使の姿に啓示を受け、本格的に占い道へ入ったという経緯が私にはあります。この教会への訪問も、実はフラ・アンジェリコのお導きだったのでは……。そんな風にも思えてしまいました。

聖なる子


この教会で見た美術品のなかでも、フラ・アンジェリコ作の「聖母子像」が、やはり秀作。この教会をつつむ薄紫のオーラのように気高さにあふれていました。


数多くの伝説に彩られ、庶民の信仰を集めてきた、奇蹟の神像との対面。

さて、今回のローマ教会めぐりのなかでも、ハイライトとなったのが、サンタ・マリア・イン・アラコエリ教会です。ローマのランドマークの1つ、ヴェネツィア広場の背後にあるカンピドーリオの丘の上にあり、素晴らしい眺望に恵まれています。

聖なる子


教会は6世紀に起源を持ち、美しいフレスコ画でも知られていますが、最大のみどころとなっているのは、“聖なる子”(サント・バンビーノ)。オリーブの木を彫って作られた幼少のキリスト像で、さまざまな伝説に彩られ、厚い信仰の対象となってきました。

聖なる子


最初、この教会の前に立った際、金色に輝くオーラが感じられました。なぜ金色なのだろう?と思いましたが、聖なる子に対面してその理由がわかりました。像が黄金に彩られていたのです。一見ユニークな外見で、ユーモラスな感じすらある小さな像。じっと見ていると吸い込まれるようなエネルギーを感じ、庶民の信仰を集めてきた理由もわかる気がしました。


ヨーロッパでの観光では、ぜひ、教会めぐりで、自分のための新たな発見を。

今回、私がローマで訪れた教会は、日本人には比較的知名度の低い場所かもしれません。しかし、それだからこそ、静かで充実したひとときが味わえました。訪れた教会のほとんどの名に“サンタ・マリア”(聖マリア)がつきますが、そのためか、あたかも母親に抱かれるようなやすらぎを感じることができました。
教会を訪れるにあたっては、敬意を忘れないことが大切です。教会は、神聖な場所ですが、人びとの悲しみや苦しみ、病気、死といったものとも密接に関わってきました。そのため、そこにあるマイナスのエネルギーを、ともすると訪れた人が吸収してしまうのです。
しかし、敬意さえ忘れなければ、生きる為の良いエネルギーをもらえるはずです。ぜひ、みなさんも、ヨーロッパでは教会めぐりをして、自分のためになる何かを発見してみてください。




教会を見ずして、イタリアを見たと言うなかれ

聖なる子


敬虔なカトリックの国イタリアでは、キリスト教文化に触れることが、観光の大きな割合を占めることになる。有名な絵画「最後の審判」も「最後の晩餐」も、ひとことで言ってしまえば聖書の教えを絵解きしたものである。キリスト教文化に濃厚に触れられるばしょ、それはもちろん教会。そこは、信仰の場所であるとともに、優れた建築、絵画、彫刻などの宝庫となっている。もし、イタリアを訪れて教会を見ることになく帰ってしまったら、この国の半分以上を見なかったともいえるだろう。
ほとんどの教会では入場料を取らない。ただし、いわゆる“志”を受け付けているので、いくらかのお金を置いてくるのもいい。教会見学で守るべき代表的なマナーは、「ふさわしい服装」、「静粛にする」の二つ。タンクトップに短パンというような肌を露出した格好は、礼を欠いたことになるので注意。また、曜日や時間によってはミサを行っていることもあるので、その際は、特に静かに見学するようにしたい。


奇蹟を願う手紙が世界中から届く「聖なる子」
サンタ・マリア・イン・アラコリエ教会にある幼いキリストの像「聖なる子」は、15世紀にフランチェスコ派の修道士が、オリーブの木で彫らせたものだといわれている。金色に輝くこの小さな像は、これまで数々の奇蹟を起こしたとされ、それらが伝説となって今に伝わっている。いわく、「重病人を治した」「死者を生き返らせた」……。それらの言い伝えもあって、過去に何度も教会から持ち出され、患者の枕元に運ばれたという。奇蹟が果たされるときは像の唇が赤くなり、果たされなかったときは唇が青くなる、とも言われている。この像の霊験は現在もなお広く信じられており、「ローマの聖なる子様」という宛名だけで、世界中の奇蹟を願う人びとから手紙が届くという。日本にも、自分の体の悪い部分と同じ箇所をさすると効き目があるという仏像がよくあるが、こちらの像は直接、手を触れることはできない。ケースの中に収まって、神々しい(やや不気味な?)尊顔を訪れた者に見せるだけである。




2004年11月「恋運歴」(イーストプレス)『オーラ紀行』         


中空の瞳(イタリア)

中空の瞳(イタリア)


中空の瞳



信仰や思い、人間の生と死が幾重にも重なりあう、教会という場所。

ローマという街には、古代ローマ帝国の遺跡があり、中世の芸術作品があり、さらにカトリックの聖地もあります。もちろん、現代ローマとしてのおしゃれな表情も。そのため場所によって、さまざまなオーラを見ることができます。
今回は、ローマ市内に点在する由緒ある教会を訪ねてみました。教会という場所は、たくさんの人びとの信仰や思いが集まるところであり、長い歳月にわたって人の生と死が幾重にも重なってきたところです。それだけに強いエネルギーと独特のオーラの響きがあり、私はとてもその魅力にひかれるのです。
今回、ローマで訪れた教会は5つ。それらのうちの2つの教会――サンタ・マリア・マッジョーレ教会、そしてサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会について、まずご紹介したいと思います。

ローマ最大の教会で感じた、重厚感と慈しみにあふれた深い藍色のオーラの理由

サンタ・マリア・マッジョーレ教会は、ローマ中心部にある有名なテルミニ駅からもほど近い、ローマ最大の教会。階段を登った高台に立つ同教会は、堂々としたたたずまい。外観を見た時には、私は淡いベージュ色のオーラを感じましたが、教会の内部に入ると、その感覚は一変しました。深い藍色のオーラが私を包みこんだのです。その藍色は、どこまでも荘厳で重厚な趣をたたえていました。
かつてヴァチカンのサンピエトロ寺院でも重厚感を味わいましたが、それは背筋が寒くなるような緊張感をともなうものでした。しかし、このサンタ・マリア・マッジョーレ教会で感じた重厚感は、それとはまったく異なるもの。神秘的でミステリアスでありながら、どこか私を落ち着かせてくれる……。「この場所を再び訪れたい」そう思わせるような悲しみにあふれた感覚でした。

中空の瞳

中空の瞳



教会内部で、ふとあるものを見つけ、その場に私は釘付けとなってしまいました。金色のイエス・キリスト像の背後の壁に、中空に浮かぶ目を天使たちが取り囲んでいる絵が描かれていたのです。この絵を見たとたん、私は、タロットカードの一枚「塔」の絵柄を連想しました。タロットの「塔」は、アクシデントや破壊を暗示する不吉なカードとして一般的には知られています。しかし、このカードの正確な意味は「自分を見つめ直して、やるべきことをやらなければ大変なことが起きる」というもので、本当はありがたい神の啓示が語られているのです。
今回、サンタ・マリア・マッジョーレ教会で私が感じた、深い藍色のオーラ、そして重厚ながら慈しみにあふれたエネルギー。それは、この不思議な絵によるものだったのでは……?そんな思いを抱きながら、教会をあとにした私でした。

中空の瞳


ミケランジェロ設計の教会で感じた、やすらぎと癒しのエネルギー。

次に訪れたのが、やはりテルミニ駅の近くにある、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会。この教会は、ルネッサンス期の天才・ミケランジェロが設計したことで知られていますが、外観はまるで古代の遺跡のよう。“BASILICA”(集会場、寺院の意味)という表示がなければ、教会だとは気がつかないかもしれません。
内部は、外光がふんだんに入り、いたって明るい雰囲気。ここで感じたのは、淡い黄緑色のオーラ、そしてやすらぎや癒しのエネルギー。聞けば、ここは古代の大浴場の跡とのこと。大浴場は円形闘技場などと並んで、ローマ人の生活になくてはならなかったものだったそうです。現代の私たちが、温泉やスパで癒されるように、この場所で多くの人びとが癒されたのでしょう。やすらぎや癒しのエネルギーを感じたのは、実はそんな理由からかもしれません。
ローマ観光といえば、壮大なコロッセオやヴァチカンが定番ですが、日本人がそれほど多く訪れない教会にも、素晴らしい場所がたくさんあります。みなさんもそれらを訪れて、個性的なオーラに包まれてみてはいかがでしょう。




奇跡の地に立つ、サンタ・マリア・マッジョーレ教会
4世紀のローマ教皇リベリウスの夢に、8月のある日、聖母マリアが現れ、「雪が降る地に教会を建てよ」と告げた。真夏だったにもかかわらず、数日後ローマのある場所に雪が降ったという。この奇蹟に基づき、その場所に5世紀に建てられたのが、サンタ・マリア・マッジョーレ教会である。イタリアには“サンタ・マリア”とつく教会が多いが、これらは聖母マリアに捧げられたという意味。このサンタ・マリア・マッジョーレ教会は、その由来から別名“雪の聖母の大聖堂”とも呼ばれている。

中空の瞳


この教会では、5世紀以来のさまざまな芸術的な手法を見ることができる。内部の壁にみられる36個のモザイクは5世紀のもので、金色に輝く天井のモザイク「マリアの戴冠」は13世紀の作。また、内部の36本の柱は、古代ローマの神殿から選ばれたものである。かつて、この教会を中心にしてローマの都市計画が進んだともいわれ、現在でも市の中心部に位置し、教会の周囲にはまっすぐな道路が伸びているのを見ることができる。


かつては大浴場だった、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会
3世紀末に、強力な支配力を誇ったディオクレティアヌス帝が、現在のテルミニ駅の北西隣の場所に造営した巨大な大浴場。その古代の遺構を活かすようにして、16世紀の半ばに、かのミケランジェロが設計したのが、サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会である。教皇ピウス4世によって工事監督に任命されたときには、ミケランジェロはすでに86歳の高齢だったため、教会の完成を見ずに亡くなってしまった。その後、さまざまな人物によって工事は受け継がれ、18世紀の半ばになってようやく完成を見た。ミケランジェロの非凡な才能を伺うことができるのが、古代の遺跡を最大限に利用したといわれる建物の前面部分。思わず「これが教会?」と言いたくなるような外観である。
ちなみに、もともとの大浴場を造ったディオクレティアヌス帝は、ローマ帝国で最もキリスト教徒を迫害したことで有名。そんな彼がローマ人のために造営した自慢の大浴場の跡に、後年、キリスト教の教会が建てられようとは、彼も思いもよろなかっただろう。




2004年10月「恋運歴」(イーストプレス)『オーラ紀行』