蠍座

蠍座

蠍座は夏場、南東の空に見ることができる大きな星座です。夏の星座の代表として親しまれ、天の川沿いにS字型で横たわっているような形状をしています。1等星、2等星と輝きを放つ星が多く、見つけることもたやすいでしょう。蠍座を構成する有名な恒星として、アンタレスが有名です。赤い巨星はまるで蠍座の人の内に秘めた情熱を表しているかのようです。

蠍座の神話を御存知でしょうか?ギリシャ神話の中でも有名な話です。かつて、オリオンという勇猛な狩人がいました。英雄ともいわれた勇者でしたが、ある日「この世の中で自分より強いものはいない」と傲慢な発言をして神々を怒らせてしまいます。ギリシャ神話では「傲慢」という罪は大罪です。大神の妻、ヘラは蠍をオリオンのもとへおくり、毒でオリオンを殺してしまいます。この蠍を使わせたのは大地の女神であったという説もありますが、兎にも角にも、オリオンを倒した褒美として、蠍は天に上げられ、星座となったのです。オリオンも月の女神の加護で星座になりますが、蠍座を恐れ、蠍座が天に昇ってくると、まるで逃れようとするように、西に沈んでいきます。

蠍座のテーマは「死と再生」。限界を超えるまで突き詰めていき、新たな道を見つける人生。

蠍は成長するときに一度脱皮して殻を捨てることから「不死」の象徴とされています。こういった数々の要素から、蠍座は「死と再生」をテーマにしているとも言われているのです。蠍座は身体では生殖器をさすとされています。これも生殖器から新たな命が生み出されることに関係しているのでしょう。
さて、蠍座の持つテーマ「死」というのは肉体の死ではなく、極限の状態を意味するものです。愛であれば自分がボロボロになるまで愛し尽くすような深い愛情、と言えばイメージしやすいでしょうか?普通はそこまで至る前に、あきらめたり、他のことに興味が移ってしまうものですが、蠍座の人が持つ情熱の強さには相当なものがあります。ある意味、自分の情熱に誠実で、どこまでも突き詰めていく。そして限界を超えてようやく新たな道を見つけて変化していくのです。一度死んで生まれ変わるような、この究極の変化を人生で実践していくのが蠍座と言えるでしょう。


一世一代をかけた恋、そんな言葉が最も似合うのが蠍座。

中途半端で終わらせない忍耐力は、ときには執念深くも見えるため、蠍座の人を怒らせると後々まで恨まれる、と周囲の人を畏怖させるパワーも持っています。しかし、蠍座の人は普段はその巨大なパワーを隠しています。蠍座の人は、しばしばミステリアスと表現されます。それはその深い情熱を人に見せないようにクールに振る舞うため、謎めいた印象を人に与えるからなのでしょう。そしてたまに見え隠れする熱い情熱から、露出が少ないのに、セクシャルな印象を与える人が多いのも特徴です。


蠍座は水のエレメント。感受性が強く、思いやりに満ちている。

それでは占星術で詳しく蠍座について見てみようと思います。まずはエレメントを調べてみましょう。占星術では星座は火、地、風、水の4つのエレメントに分けられますが、蠍座は水のエレメントに区分されます。水のエレメントの人は感受性が強く、想像力豊かで、自分の損得よりも「情」をなにより大切にする温かさを持っています。彼らの心の中には、大切なものを守りたい、という愛情が秘められています。同情心があり、思いやりに満ちた人々なのです。

蠍座は一般的にも深い愛情を持った星座と言われますが、それはこの本質からきているのでしょう。しかし、水のエレメントにも短所があります。自分と同じような愛情を相手に求め過ぎたり、想像力が拡大して被害妄想になってしまうこともあるのです。これは嫉妬や独占欲となって表れることになります。蠍座の人は、人と深く関わりたい、というテーマを持っています。
元々、水のエレメントにも水が土に溶け込んでいくように「融合する」という性質があります。愛する人になにもかもを捧げるような情熱的な恋をするのは、自身の権利さえもなげうって一緒でありたいと、一体化したいという思いがあるからからなのです。蠍座の人は防御心が強く、なかなか心を許さないのは、心のどこかで、心を開いた途端、深い愛情をその人に捧げてしまうことを知っているからなのかもしれません。そのためか、蠍座の人は親しくなると、相手のことを試すような行動を取ることがあります。これは、本当に心を開いていいか、相手の本性を見抜こうとしているからなのでしょう。


「不動宮」の蠍座は、愛情も憎しみも長く続く。

また占星術では星座は活動宮、不動宮、柔軟宮の3種類に区別されます。蠍座は不動宮(フィクスト)に区分されます。水のエレメントが示す「情」それが不動宮、つまり「固定」されるということで、愛情も、そして憎しみも長く続くことが示されています。蠍座の人が、味方にすると誰よりも頼もしく、そして敵にすると最も恐ろしい、と言われるのは、この忍耐強い情熱を指して言われるでしょう。また蠍座の人は「不動宮」の性質が示す通り、即座に行動しようとはしません。最適と思われる方法を見つけるために、エネルギーを蓄えながらじっくりと考えます。蠍座の人が行動を起こすときはすべてが整ったとき。だからこそ「望みを必ず達成する星座」とも言われるのかもしれません。


支配星が冥王星の蠍座の、一番特徴的な性質は「深い探究心」。

蠍座の支配星は冥王星です。現在、天文学上では冥王星は惑星とは定義されなくなりましたが、占星術上では依然として重要な星として扱われています。大きな力を持つ星とされており、秘密や破壊と再生という意味を持っています。蠍座の持つテーマそのものと言ってもいいかもしれません。蠍座の人は深く秘められたものに強い興味を抱きます。それは人の心の奥底の心理であったり、また英知の限界であったり、不可思議な神秘現象だったり様々です。ミステリーやスピリチュアル好きの蠍座の人も多いとされています。一般的に、蠍座の人のその特徴は、恋愛面ばかりを取り上げられることが多いものです。そのために、蠍座というと「嫉妬」や「恨み」などマイナスな要素をイメージしたり、逆にまたそのフェロモン旺盛なセクシーさばかりを取り上げられることが多いのですが、私は彼らの性質の一番特徴的なところは、深い探究心であると考えています。その研究熱心さが恋に現れるか、勉強か芸術かで、その人の運命は変わっていくことになるでしょう。

実は私は、蠍座の人は占い師としての資質を備えているのでは、と考えています。持続性のある探究心を持ち、表と裏、すべてを知り尽くしたいと言う欲求を持つ蠍座の方々。彼らの興味が神秘に向いたとき、素晴らしい研究結果を見せてくれることでしょう。自分の情熱に忠実な蠍座の人は、激しく人を愛し、真剣に物事に向き合い、研究します。人を愛するために秘密主義の自分を壊し、研究を進めるために、自分の思い込みを破壊し捨て去り、どんどんと変貌していくのです。こうして破壊と再生を繰り返し、彼らは社会に溶け込み、成長していくことになるのです。大小の差こそあれ、多くの失敗と成功を積み重ねた彼らの人生は、とても豊かで色濃いものとなっていくのでしょう。


死神
それでは最後にタロットの話をしましょう。蠍座の象徴となるタロットカードは「死神」になります。その名称から、不吉なものを感じ取った方もいるかもしれません。タロットには多くの解釈法がありますが、私のオリジナルタロットでは、「死神」は「変化」「再生」を示すカードであり、マイナスの意味だけを持つカードではないのです。
ステラタロットの「死神」は大きなカマを持ったドクロが描かれています。一見、おどろどろしく見えますが、この死神が断ち切ろうとしているのは、人が持つ愛憎や未練です。「死神」のカードは「不要なものを捨てて、無になりなさい。そこから新しいスタートが始まります」というメッセージを伝えています。苦難の先にある再スタート、それを暗示するカードなのです。

蠍座の人が持つ忍耐力を秘めたパワーは12星座の中でも随一と言われています。長く情熱を継続させるためには相当のこだわりが必要になるでしょう。自分の信念を守るために、警戒心や、対抗心が強くなるのも当然です。目的を達成するために自分の弱みを見せることに敏感になり、出し抜かれないために洞察力を鋭くし、相手の秘密を探ろうとします。ですから蠍座の人は、相当親しい間柄でも、自分の弱みを見せようとしないのです。攻撃される前に、先に打撃を与えようとする怖さも持っています。そういった戦いを繰り返しているうちに、情熱と共にマイナスの感情が膨らんでいくことにもなるのです。
また蠍座の人がどんなに辛抱強く願っても、人生の中では叶わないこともあります。達成されなかったことへの未練、大切なものを奪い取られた憎しみに囚われていては、新しい一歩を踏み出すことはできません。蠍座の人にとっての「死神」のカードはその情念の世界から解放してくれるもの。自分を苦しめている感情やこだわりを断ちきることで、またまっさらな自分に戻り、新たなスタートを切ることになるのです。

魅力的な蠍座の人は、自分のエゴを切り捨て、何度も再スタートを切ることができる強靭な精神を持っています。まさに「死神」のテーマが蠍座の人を磨いていくことになるのでしょう。蠍座の人の愛情は深く、強いとされますが、その愛情から、嫉妬や独占欲を切り捨てることができれば、それこそ、至上ともよべる素晴らしい愛を人に与えることができるのです。
射手座

射手座

大空に浮かぶ射手座を眺めてみましょう。射手座は起源が古く、最古の都市文明、シュメール文明まで遡るとされています。形は半人半馬の人物が、矢を引いた姿とされています。この矢は蠍座の一等星、アンタレスを狙っているという逸話があります。オリオンを刺殺した蠍が、天上で暴れないように威嚇している、という説が有名です。
射手座を絵で表すとき、上半身は人間、下半身が馬という半人半馬の姿で描かれます。ギリシャ神話ではこの馬人をケンタウロス族と呼んでいます。ケンタウロス族は野蛮で好色といった面も持ちますが、中には善良なものもいます。射手座の神話の主役、ケンタウロス族の長、ケイローンはまさにそうでした。ケイローンは音楽の神アポローンと月の神アルテミスから音楽・医術・予言・狩りなどを授けられた知恵者です。ぺーリオン山の洞穴の中に住んで、ギリシャの若者たちを、教育していたと言われます。ケイローンはヘラクレスと戦った時に、ヒドラ(水蛇)の毒を塗った矢で、刺されました。ケイローンは不死身であったために苦しみ、最後は永遠の命を神に返し、黄泉の世界へ旅立ちます。大神ゼウスがそれを惜しんで天にあげ、射手座になったのだと、伝えられています。

好奇心旺盛で、興味のある方向へと挑戦を繰り返していく。

射手座の人は知的好奇心が旺盛です。また自分で知識を詰め込むだけでなく、その知識を人に分け与えるのを得意としています。ケイローンのように、優れた教師としての素養を備えた人が多いのが射手座の特徴と言えるでしょう。また、射手座のシンボルは弓矢の形をしています。この放たれた矢のように、好奇心が四方八方に飛んでいきます。ひとつの知識を得たら、好奇心は別の方向に向かっていくのです。ひとつのことを掘り下げ、探究していく蠍座と違い、射手座の人が持つ好奇心はどこまでも広がっていくもの。好奇心に従い、興味のある方向へと挑戦を繰り返していくのです。


支配星が木星の射手座は、楽天的な性質を持つことが多い。

大胆な判断力とチャレンジ精神を持つ射手座の人が多いのは、彼らが根本的に未来に対して恐怖よりも、希望を抱くことができる楽天的な性質を持っている人が多いことを表しています。目の前に広がる道が明るい方向へ向かっていると信じられるからこそ、周囲の人が怯むような挑戦も、ためらわずに決断することができるのでしょう。 射手座の支配性は木星です。木星は占星術では「幸福の星」として説明されることが多く、発展、成功、寛大、知恵を表すといわれています。しかし同時に、過度の楽観主義、虚栄心といったものも暗示しているのです。 射手座の人は経済観念が甘く、実入りがあっても出ていくものも多いと言われます。またこの楽観主義から自分を守ろうとする慎重さが欠け、波乱万丈の人生へ飛び込んでいくことになるのでしょう。実際に、射手座の人は、平平凡凡とした人生を避けて通ろうとする性質があります。


射手座は火のエレメント。直感と行動力を持ちあわせ、自由を求める傾向。

占星術では12星座は火、地、風、水の4つのエレメントに区別されます。射手座はその中の火のグループに当たります。火のグループの特性は「直感」。理想が高く、これを試したい、と感じたらすぐに動ける行動力を持っています。得に射手座の人は心身ともに自由を求める傾向が強いので、もし失敗したら、というような心の枷になるようなマイナス感情に囚われることを、無意識のうちに排除しようとします。だからこそ、周囲の人が驚く様な大胆な挑戦に挑むことできるのでしょう。


自分とは違う文化や考え方を受け入れる、心の柔軟性を持つ。

また12星座は活動宮、不動宮、柔軟宮の三つに分けられます。射手座はこの中で柔軟宮に当たります。柔軟という言葉の通り、どんな運命が降りかかってきても、一つの考えにこだわることなく、その場に応じて対応できる資質があります。ピンチに強い星座と言えるのかもしれません。
射手座の人が知識や経験をどんどん吸収していくことができるのは、好奇心と、自分とは違う文化や考え方を、柔軟に受け入れることができる心を持っているからなのでしょう。
またこの好奇心が知性を磨くだけでなく、対人にも発揮されます。言葉は悪いのですが、射手座の人は気が多い、という話を聞いたことはないでしょうか?常に新しい刺激を求める射手座の人は、いつも同じ相手との交流ではマンネリ化を感じてしまうため、次々と出会いを広げていきます。だからといって、新しい友人ができたから以前までのつきあいとは疎遠に、という無情な性質ではないのです。恋を語る相手がいても、しばらくたつとまた違う魅力を持った相手に好奇心を抱いてしまう。ただしそれはあくまで興味であって、心変わりではないようです。中には恋多き人もいるかもしれませんが、ほとんどの射手座は愛情をしっかりと維持することができるでしょう。 ただし、彼らの愛は「自由」です。
どんなに愛した人がいても、彼らの時間は愛のためだけには使われません。趣味、個人的な付き合い、勉強など、恋愛以外のものにも情熱を注ぎます。愛情がなくなったわけではなく、他にも大切なものが増えただけなのです。


射手座の最重要のテーマは「自由」。

占星術では天体を12の宮に振り分けこれを黄道12宮(または獣帯)といいます。太陽はこの12の宮を一年かけて移動していくことになります。人馬宮に入っているときに生まれた人を占星術では射手座になります。黄道12宮は金羊宮(牡羊座)からスタートするので、人馬宮(射手座)は9番目になります。
8番目の蠍座は他者との融合がテーマでしたが、射手座になるとまるで繋がった糸を炎で焼き尽くすかのように、他者との繋がりによるしがらみから自由になろうとします。もしかすると天空の射手座は、自分が縛られないように、情と言う縄を仕掛けようとしている蠍を威嚇しているのかもしれません。自由である射手座の人は、自分の信念を曲げてまで、他者に受け入れられようとは望みません。理解を得られないのなら意見を闘わせ、また対抗意識を燃やすことによって自分を高めていこうとするのです。
殻を破って外への飛び出そうとするエネルギー、射手座の最重要のテーマ「自由」はここからも見ることができます。
ただし、言葉の矢を見切り発射する短所もあります。本人は楽天家なので、コミュニケーションの失敗も謝罪したら忘れてしまいますが、しつこく覚えている人もいますので、慎重さも忘れないようにしましょう。

スポーツへの関心が高いのも射手座の特徴。

射手座は教師の特質があると以前書きましたが、その対抗心、前向きなパワーはスポーツ選手としても発揮することができるでしょう。あなたの周囲にも、スポーツ好きの射手座の人がいると思います。それも流行のスポーツやダイエットエクササイズの情報をいち早くキャッチし、すぐに試そうとする好奇心旺盛なタイプではないでしょうか?
世界を広げ、学び、成長していくのが射手座の人の特質です。若い頃は元気さだけが取り柄で、人が止めるのも聞かずなんにでも挑戦したがったり、他者への配慮が足りなかい人もいるかもしれません。しかし、上手に年を取ることができれば、誰に対しても寛大で、自分の得た知恵を人に分け与え得ることができる、懐の大きな人物になれるでしょう。


節制
最後にタロットを読み解きながら射手座を研究してみましょう。射手座と紐づけられたタロットカードは「運命の輪」です。「運命の輪」は人生の岐路を示すカードです。三種の生き物がのった輪をまわそうとしている人物がいます。この輪は人生の浮き沈みを表し、輪の近くの人物はあなた自身です。あなたが輪を回すことで人生は進みます。未来を上昇させるか、下降させるかはあなた次第なのです。

射手座の人はチャレンジ精神にあふれ、未来は希望に満ちていると信じています。彼らが運命のターニングポイントに立った時、迷わず自ら道を選ぶでしょう。たとえその先に困難があったとしても、不屈のガッツで上昇させていく、そんなポジティブなパワーを持った星座なのです。 神話の話で説明しましたが、射手座は半人半馬のケンタウロスのケイロンがモデルとなっています。ケイロンは知力に富み、また強靭な強さを持っています。我々が射手座の人をイメージするとき、世界の枠すらも飛び越えようとするような行動力をイメージしますが、その行動の原動力となっているのは知的好奇心。射手座の人は刺激だけでなく、叡智を探求する性質を持っています。知性と体力、両方を兼ね揃えているのが射手座の人の魅力なのです。彼らが四方に向けられる好奇心は、自分へも向かいます。自分の使命はなになのだろう、なぜ自分は生まれてきたのか、と自己探求を繰り返し、やがてそれは自分の生まれた国の行く末や、地球上における人類としての役目、など、興味はどんどんと拡大し、哲学的になっていきます。射手座の人に人生観を問いかけてみてください。おそらく、自分なりに考えた答えを、熱く語ってくれることでしょう。

射手座の人は旅好きな人が多いのですが、彼らが旅に求めるものは刺激と気づきです。新しい文化や価値観を知ることで、自分の人間としての幅を広げていこうとするのでしょう。彼らは素直な心を持っているため、新しい情報を進んで受け入れます。「学ぶ」ということは射手座の人にとって大切なテーマなのです。飽くことなき好奇心とチャレンジ精神。それこそが、射手座の人のパワーの源なのかもしれません。 心の中には青春時代のような情熱を、年を経ても持ち合わせ、何度も運命の輪を回して人生を旅していく。まさにこのカードは射手座の人の人生そのものを表しているカードといえるでしょう。