乙女座

乙女座

乙女座は大きな星座で、天空の広い範囲に星が瞬いています。
一番見つけやすいのは一等星のスピカです。うしかい座のα星アルクトゥルス、しし座のβ星デネボラ、そしてスピカを結び、春の大三角と呼ばれています。乙女座銀河団と言われる銀河も多数存在しています。
みなさまも一度、望遠鏡で無数の星の瞬きをご覧になってみてください。

乙女座は西洋占星術では処女宮とも言います。乙女、処女から連想するのは純粋な女性。乙女座にまつわるギリシャ神話もそのイメージにぴったりくるような物語です。
ギリシャ神話の中に、大地と豊穣を司るデメテルという女神が登場します。デメテルにはとても愛らしい娘、ベルセフォネがいましたが、ある日、ベルセフォネは冥界の王ハデスに見染められ、冥界に連れ去られてしまいます。嘆き悲しんだデメテルは洞窟の奥に籠ってしまいました。その影響で地上は枯れ果て大変な状態になってしまいました。
驚いたゼウスが仲裁に入り、ベルセフォネは母のもとへ帰ることになりますが、その道中、ハデスに渡された黄泉のザクロを4粒食べてしまったため、毎年、食べたザクロ分の4カ月、冥界に戻らないといけなくなったのです。
その時期が来ると、毎年デメテルは身を隠してしまい地上が荒涼とした風景に。こうして「冬」が生まれたという神話です。
乙女座は稲穂を持ったデメテルの姿であるとされています。

勤勉・真面目で粘り強く細かなことに気が回る。

乙女座の人は勤勉で、奉仕の心を持っていると一般的に言われています。
デメテルの持つ稲穂に目を向けてみましょう。立派な稲穂を育てるためには、根気強く大地を耕やす真面目さが必要になります。
また、良い穂を作るために情報を集めて計画的に対策に取り組んでいく実直さ、小さなことにも気付ける緻密さが必要になります。
真面目で粘り強く細かなことに気が回る、乙女座の性質をそのままさしているようではないですか。


サポーターとして優秀な働きを見せてくれる、謙虚で奉仕の心をもつ星座。

さらに細かく乙女座の性質を見ていきましょう。乙女座の人は普段は穏やかなのですが、気になることがあると、ずばりと厳しい一言を放つ、毒舌家の人が多いのも特徴です。細かい所が気になるから、口煩くなったり、一言多くなるのでしょう。

また慎重さから不安感が強く、リスキーな仕事に挑んだり、矢面に立つようなリーダーの役割を敬遠する面もあります。その代わり、優秀なリーダーを得ると、相手が失敗しないよう、あらゆる情報や手段を使って盛りたてていこうとします。
サポーター的な役割を務めさせると、非常に優秀な働きを見せてくれる星座なのです。それでいて自分が支えてきたことを自慢しない。この謙虚さから、奉仕の星座と言われているのではないでしょうか。


乙女座は地のエレメント、支配星は水星。人の役に立つことを望む現実主義の慎重派。

占星術では各星座は火、地、風、水の4つのエレメントに分類されるのですが、乙女座は「地」に所属します。地の星座の特徴は、堅実で現実的。冒険よりも確実な結果を求めるので、保守的で慎重です。
また乙女座の支配星は水星になります。水星は知性と情報、コミュニケーションを示します。エレメントと支配星の性質から、乙女座の人は現実主義で慎重派。そして自分の知性を人の役に立たせることで、信頼しあえる関係を築こうとします。

乙女座の人は自分がヒーローになって活躍するよりも、人に頼りにされ、その人の役に立つことを望みます。大切な人に必用とされることで、自分の存在価値を見出すのです。信頼に値する知識を磨くために勤勉になり、こういうことをして欲しいと求められると完璧にやり遂げようとします。円滑な人間関係を望むため、対人に関しては謙虚で親切です。乙女座の人は、細かなことによく気がついてくれる人が多いのも、この役に立ちたいという性質からくるものでしょう。


失敗せずに結果を出したい、完璧さを求める気質。

また乙女座は、失敗を恐れる星座と言われています。失敗せずに、周囲の人に認められるような結果を出したいから、安全に物事を進める方法を模索し、研究します。しかしそれがいき過ぎると、すべて自分の思うように進めたいからと仕事を抱え込んだり、自分のやり方を貫こうと頑固になったりする短所が出てくるのです。
普段は穏やかな乙女座の人が、いきなり殻に閉じこもったようにアドバイスに耳を貸さなくなるときがあります。それはこの性質が出てきたときなのです。乙女座の管理能力が高い、という性質の原点は、この完璧さを求める気質、失敗を避けようとする防衛本能からきているのでしょう。
乙女座の人は目に見える結果を求める傾向も強いので、健康に対する関心も高い人が多いのも特徴です。健やかな自分を保つために怠惰な生活を送ることも苦手とします。乙女座の人を伴侶にすれば、細かく注意されることもありそうですが、お金も健康もしっかり管理してくれることでしょう。


「柔軟宮」の乙女座は意志が固く、コツコツと努力を積み上げられる働き者。

占星術では12星座はエレメントの他、活動宮、不動宮、柔軟宮という3つのタイプに分けられます。乙女座は柔軟宮に当たります。
柔軟宮というと臨機応変で機敏という印象を受けますが、乙女座の人の性質はどちらかというと意志が固く、頑固です。それもそのはずです。柔軟宮には自分が変わるだけでなく、物事や人を調整させ、望むように変えて行こうとする性質もあるのです。そう考えると争いを嫌うために人との和に力を入れ、目標が見つかればリーダーを後押しして物事を進めて行こうとする、乙女座の性質をぴったりと表しています。
この乙女座の性質が良い面で出ると、冷静で知的な判断で、周囲の人を陰ながら導いていく頼もしい存在になりますが、悪い面が出ると、陰から物事を管理し、支配しようとします。どちらにしても味方につけると頼りになり、敵に回すと手強い存在と言えるでしょう。

乙女座のシンボルは豊穣の女神ですが、これは豊かさや豊熟を示すと言うよりは、豊穣のためのコツコツと積み上げられる努力を表しているようです。そして来年もまたその先も大きな実りを得るために、技術を磨いていくのです。
その性質を持っているためか、乙女座の人は辛抱強く、働きものが多いのが特徴です。会社に勤めていなくても、家業や家事、育児に精を出します。金銭に困れば、働いて富を得ようとし、また得た富を守るために無駄使いを厭います。困難があるとその原因を分析し、時間がかかっても解決を導き出そうとします。その分細かくなり、他人の欠点にも敏感になってしまうのが乙女座らしい特徴と言えるでしょう。


隠者
最後にタロットについて語りましょう。
乙女座に対応するタロットカードは「隠者」です。隠者は知恵、思慮深さ、慎重さ、俗世からの離脱、を示すカードです。ステラタロットでは、太陽のランタンを持った黒いマントを着た人物の姿として描かれています。彼はもうひとつの手に杖を持ち、その杖には知恵の象徴である蛇が巻きついています。

乙女のイメージと、この仙人のような人物をミスマッチと思われる方もいるかもしれません。この人物の持つ太陽のランタンは、導きの光。自ら経験し学んできた知恵を人の与えることによって、人を救える人物であることを表しているのです。人の役に立つために、知恵や知識を磨いていく乙女座の性質にしっくりくるカードではないでしょうか。
また隠者が象徴する慎重さ、思慮深さは、乙女座の人の恋愛や金銭関係に対する姿勢を表しているようにも思えます。心は許しているけれど、本当にこの人を永遠に愛し続けられるのだろうかと自分に問いかけ続け、将来の経済状況を楽観視せず、シンプルな生活をモットーとしたがる。乙女座の持っている性質はまさにそれです。また、夢や恋、仕事に対する情熱的な思いが募っても、表面的にはその「熱さ」を見せようとしない慎み深さは、黒いマントで自分をくるみ、中身を包み隠した隠者の姿と被るものがあります。

乙女座の人は精神的な結びつきを愛する相手に求めます。どれほど裕福でルックスが好みでも相手の心が見えないうちは、なかなか心が動かない。俗的な欲に惑わされないプラトニック性の高い愛情、それが乙女座の性質がもっとも良い形で現れた愛になります。しかし、考え込み過ぎることで、他者への疑心暗鬼に繋がったり、ひとりの世界に閉じこもりたがる排他的な性質を見せる乙女座もいます。
隠者のカードは「人の助言を請い、自分を見つめ直し、知恵として吸収しなさい」というメッセージを出しています。これこそが乙女座の長所を伸ばすヒントと言えるのではないでしょうか。
天秤座

天秤座

夜空に浮かぶ天秤座は、二等星以上の星がないため、すぐに見つけるのは難しいかもしれません。元々は蠍座のハサミの部分だったとされており、12星座の中では最も新しい星座です。

ギリシャ神話では、天秤座の由来である天秤は、正義の女神アストライアの持っていた天秤と言われています。
かつて黄金時代といわれていたころ、神と人は仲良く暮らしていました。諍いが起こると、アストライアが双方の魂を天秤にかけ、どちらが正しいか測り、争いを収めていました。甘言に騙されることなく真実を見抜くアストライアは、常に公正で公平でした。
そして時代は銀、銅の時代へと続きます。人はその間に収穫を覚え、金属を発掘し、文明や文化を発展させます。それに従い、物欲、嫉妬、独占欲が芽生え、争いが絶えなくなりついに戦争が始まります。他の神々は人間に嫌気がさし神の国へと去っていき、アストライアだけが残りました。しかし鉄の時代になるとさらに人心は歪んでいきます。人間に絶望したアストライアもついに地上を離れ、夜空の星となったのです。

争いを避け、誰にでも人当たりがよい天秤座。

正義の女神が、嘘に惑わされることなく、天秤を使って人と人との調整に努めたように、天秤座の人は誰とも公平に付き合おうとします。人と争うことを苦手とするため、人当たりがよい人が多いのも特徴です。人気者で人を立てるのが上手な天秤座の友人がいる方も多いのではないでしょうか。天秤座の人が他人に求めるのは調和の取れた関係です。特定の人だけとべったりせずに、誰とでもにこやかに話をすることができる社交上手な人が多いのが天秤座なのです。


新しい環境へ馴染もうとする臨機応変さを持つ。

天秤座の人は社会に適応することで、自分の可能性を模索し、世界を広げていこうとする性質を持っています。転校や、転職をしたとき、いち早く新しい環境に馴染み、自分の立ち位置を見つけ出そうとする臨機応変さを発揮するのは天秤座ならではの能力と言えるでしょう。


天秤座は風のエレメント。知性的であっても現実主義ではないのが特徴。

それでは占星術の観点から天秤座を見ていきましょう。
太陽の動きは年によって微妙に異なりますが、だいたい秋分の日の頃に天秤座に太陽が入ります。この期間に生まれた人が天秤座になるのです。昼が夜より短くなる境目のときで、その先には美しい紅葉や収穫の時期が待っています。芸術に親しみ、豊富な人脈との楽しいひとときを望む人が多い天秤座。人生の娯楽を大切にする天秤座に相応しい季節とも言えるでしょう。

占星術では12星座を火、地、風、水のエレメント(四区分)に分けます。天秤座はエレメントでは「風」に区分されます。風のエレメントは知性を表します。しかし風は感じることはできますが、実態がないもの。知性的であっても現実主義ではないのが風のエレメントの特徴です。
人から得た情報や知恵を大切にし、ロマンに満ちた夢を掲げます。現実に囚われることなく、知的で創造力に富むのが天秤座の魅力です。興味のある情報をどこまでも追求していくという特徴から、アーティストや研究者、学者にも適しています。


より多くの人との交流を望むのが天秤座の本質。

天秤座の支配星は美と愛の星、金星です。音楽やアートを愛してやまない天秤座の人も多いでしょう。お気に入りのインテリアを配した部屋で、好きな音楽を聴きながらのんびり時間を過ごす、そんな癒しの時間をなによりも大切にしているのが天秤座の人なのです。恋多き人も少なくはなく、愛し、愛されることに喜びを見出す星座ですが、公平さを大切にする、という天秤座の特性が彼らの恋愛を独特のものにしています。恋愛にのめり込む前に、愛する人と自分がそれぞれ心地よい関係を築いているか考えてしまう。フェアさを追求し、そして相手にもそれを求めます。多少の嫉妬心や束縛心はありますが、がんじがらめの愛情を求められるのは苦手な人が多いでしょう。

また天秤座は活動宮、不動宮、柔軟宮の3区分では活動宮(カーディナル)に分けられます。活動宮は文字通り、アクティブな性質を持っています。知性のエレメントと活動宮の特徴を持っている天秤座は好奇心旺盛。興味深い情報がもたらされるのを待つ前に、自ら動いて情報を探しにいきます。また天秤座のテーマは社会性、つまり対人関係です。より多くの人との交流を望むのは天秤座の本質とも言えるでしょう。会話の席では注意力を分散させ、あらゆる人の言動にきちんと対応しようとする社交上手の才能を持っています。学生時代の仲間、仕事関係の知人、趣味の仲間、スポーツを楽しむグループ・・・、色々な社交場所を持っていて、それぞれの友人を大切にしている、そんな人付き合いを好みます。


社会の中で自分を活かす方法を追求することが天秤座にとって大切なテーマ。

天秤座は十二星座の7番目にあたります。占星術では牡羊座から乙女座は「個人」の星座と言われています。それはここに属する星座にとって大切なことが、自分の存在をアピールしたい、認めてもらいたい、というように個人に関することだからです。
そして天秤座からは「社会」の星座となります。後半の6星座は社会の中でどう生きるかがテーマになるのです。そのトップバッターが天秤座です。

社会の中で自分を活かす方法を追求することが天秤座にとって大切なテーマです。天秤座の人は「他人」に非常に興味を持っています。相手をよく観察し、その深層心理を探ることでその人との上手な付き合い方を模索していくのです。天秤座の人が近づき過ぎない距離間を保とうとするのは、相手を見抜こうとする冷静さがあるからでしょう。また人に好かれることにこだわるため、洗練されたコミュニケーションを操る人も多く、オシャレ好きが多いようです。この冷静さとバランス感覚は人生にも反映されます。仕事で頑張った後は、娯楽もそれなりに楽しみます。恋もせず、仕事だけの人生を送ることは、とりわけ天秤座の人にとっては辛いことでしょう。

社交上手と名高い天秤座ですが、意外に頑固者が多いことも特徴です。今までにこにこしていたのに、この点だけは譲らないと意地を張る天秤座に困った経験がある人もいるのではないでしょうか。天秤座の人は秩序と公平さを大切にするので、それを逸脱した行為に関しては譲らないところがあるためです。特に美意識の高い天秤座は不摂生やセンスのない人やものに厳しい目を向けるところもあります。その価値観の幅を広げることができれば、真の社交人として人々に好かれ、社会の中でも重宝される存在になることができるでしょう。


正義
最後にタロットの話をしましょう。 占星術の十二星座はその特質から、タロットカードに紐づけられています。天秤座のタロットカードは「正義」。ステラタロットの「正義」のカードに描かれているのはブルーの服を纏った女性。片手には剣を、片手には天秤を手にしています。バランス、公平さを意味する天秤に加え、剣が表すのは情に流されない冷静さと決断力です。まるで裁判官のような厳しい表情をした女性です。
こう説明すると、公正、公平さは天秤座のテーマとも言われますから理解できるのですが、剣を見てみると、温和で人当たりのよいと言われる天秤座のイメージにしては少しクールな印象を受ける人もいるかと思います。
剣は別の意味では「知恵」を表します。ゆらゆら揺れる天秤を安定させるために知恵を使う、それは多くの人の中で、コミュニケーションや知恵を使いながら、上手に人と縁を結んでいく天秤座の才能を思わせるものではないでしょうか。

さて社交上手な天秤座ですが、天秤座の人は与えるだけでなく、相手からなんらかを得るギブアンドテイクの関係を目指します。親しくすることで知恵を得る、愛を注ぐことで愛されようとする、すべてのことにおいてフェアであろうとするのが天秤座の特徴とも言えるでしょう。ただし、天秤座の人は無用な争いを避けるため、誰にでも愛想よく振る舞い、決断しようとしない優柔不断なところもあります。正義のカードに描かれた剣を持った女性のように、惑わない決断力を持つことができれば、もっと魅力的に輝くことができる星座です。