◇◆ 太陽神ラー ◆◇

 

エジプト全域で、時代を問わず常に信仰を集めた太陽神
それが、【ラー】です。
強大な影響力にあやかって、ファラオ達はこぞって「ラーの息子」を名乗りました。
その姿は、頭上に太陽円盤をいただいたハヤブサの様子で描かれます。
ハヤブサと聞いて、思い出すエジプト神はいませんか?
そう、私も大好きな【ホルス】もまた、ハヤブサの頭部をもった姿で描かれます。

大気や湿気の神、シューとテフヌト、そしてバステトの父とされるラーは、イシスとオシリスの子であるホルスにとって祖先ともいえる存在です。
父の仇ともいえるセトとの戦いに勝って、上下エジプトを統一した、初代ファラオとされる【ホルス】の逸話は、太陽神【ラー】とシンクロするものが多々みられます。

しかし、このように、【ラー】と【ホルス】が同時に描かれていることからも、その存在は【神】と【ファラオ】として、同時にあがめられ、信仰されていたようですね。

 

 

◇◆ 太陽の力と死生観を象徴する神 ◆◇

 

世界中をみても、太陽を神として信仰することは、珍しくありません。
その暖かな光であらゆる命を育む一方で、干ばつで恐怖に陥れることもある太陽は、人知の及ばない絶対的な存在とされるのも当然です。

しかしさらに、エジプトにおける【ラー】の存在は、そういった太陽のパワーのみならず、日の出から日没、そしてまた昇ってくるその姿にも、意味を見出したものでもあります。
エジプト神話における神々やシンボルの多くは、「生」と「死」、そして「再生」といったものと結び付けられていますが、その最たるものが【太陽】です。
古代エジプトのファラオ達が眠る「王家の谷」は、ナイル川を挟んで西岸陽が沈む方角にあり、対する東岸が昇る「生者の都」「神の都」とされ、国家最高神であるアメン神の為に作られた「カルナック神殿」と「ルクソール神殿」があります。このことからもわかるように、古代エジプトでは、太陽の動きを人の一生になぞらえていたのでしょう。
【ラー】の存在そのものが太陽であり、日の出の時は太陽を転がすスカラベの姿で東側に現れ、日中はハヤブサの姿あるいは太陽の舟に乗り天高く昇り世界を照らし、日没とともに死んだのち雄羊の姿で夜の舟に乗り、さらに冥界を旅して翌朝蘇る。まさにエジプトの死生観そのものであり、復活を望んだファラオ達がその名にあやかってきたことは言うまでもありません。

 

私が心惹かれるのは、そこはかとなく漂う知性や威厳を持つものであったりするのですが、【ラー】の放つ圧倒的オーラや、絶対的パワーはやはり、問答無用な説得力を感じます。
しかし神話では一方、年老いて弱った姿も描かれています。イシスに惑わされ、彼女に絶対的魔力を授けることになってしまう逸話もあるように、ただ強く完璧なだけではないところが、エジプト神話の面白いところですね。