◇◆ マアト 正義の女神 ◆◇

死者の審判において、最後の裁きをする「正義の女神」マアト。
私は彼女に、タロットカード8番、「正義」を感じます。



マアトの姿は、一目瞭然、大きな羽を広げた姿で、頭にも羽を付けています。

これは、真理・秩序を意味するダチョウの羽です。
マアトは、秩序や法、真実そのものであると考えられていたようで、別の神と習合したり、化身となって別の姿になったりすることもなく、正義という概念を神格化した神といえるでしょう。
そのため、他の神のように、決まった神殿があるわけでもなく、マアトを祀る祭儀などもとくには無かったと思われます。

しかし、神話の中では、重要な役割を担っていました。
皆さまは、「死者の書」というものをご存知でしょうか。
死者の霊魂が肉体を離れてから冥界へ降りる過程、そして死後の世界で受ける裁判や、その裁判官オシリスに語るべきことなどが記された、死後の道しるべともいえる書で、死後も生き返るためにあらゆることを施し、準備していたエジプトの死生観が色濃く表れたものです。
死後の裁判において、死者はその心臓を天秤にかけられ、片側には真理の女神マアトの羽を乗せます。秤の目盛りを見つめるのはアヌビス。その場を取りしきるのは、書記官でもあるトトです。
魂が罪の重さで傾いてしまうと、死者がオシリスに真実を語っているかが一目瞭然。その口から出たことが嘘であった場合、アミメトにその心臓を食べられてしまい、二度と転生出来なくなってしまうということなのです。マアトは、死者の魂を裁く真理のものさし、正義そのものといえるでしょう。
感情を出さず、きっちりと天秤で真理をはかるその姿に、とても魅力を感じます。
タロットカードの大アルカナ「審判」のカードにもあるように、最終的にひとつの世界が終わり次のステージに行くとき、今までの行いをチェックし、審判にかけて重要な判断と決断をする……


それを司るマアトは、冷静さと判断力の象徴であり、私もそうありたいと、憧れる存在です。

エジプトの死生観に関しては、様々な神が関り、興味深い神話が数多くありますので、今後もご紹介していきたいと思います。
お楽しみに。

 

◇◆ 女神の見分け方 ◆◇

さて、これまで様々な女神をご紹介いたしましたが、見分け方についての豆知識をひとつ。
エジプトの女神は、頭にのせているもので判別が出来るのです。
例えばこちらの壁画。


王妃の前に並ぶ三人の女神は、一番前が角が生えたようになっている間に太陽を模した円盤を付けているハトホル、続くのは王座を表す椅子を乗せたイシス、最後が羽を広げ頭にも羽をさしているマアトです。
コムオンボ神殿にみられるこちらの壁画も、しっかりと頭に羽をさしているので、マアトですね。


しかし、よく見ると女神は羽を広げている姿で描かれていることが多々あります。
王座を乗せたイシスが羽を広げているものが多いですが、このように、頭に角と円盤を乗せたハトホルとみられる壁画もあります。


特にお土産屋さんで像やパピルスを購入しようと思ったら、しっかりチェックすることをおススメします。
以前私も、羽を広げているものがマアトだと思っていたのに、購入してきたものの中に、羽を広げているのにイシスの象徴である王座が頭に乗っていたものがあって、実はイシスだったと判明したものもあります。
お土産屋さんに確認してみても、その人自身もよくわかっていない場合もありますから、この見分け方をしっかり覚えて、チェックして下さいね。

何かを決断したいとき責任ある立場でジャッジしなくてはならない時、そんな時にお守りになるのがマアトです。
部屋に飾って気持ちを整え、その力にあやかりたいですね。
私も部屋にあるこの像を、お守りにしています。