◇◆ スカラベ 聖なる甲虫 ◆◇

タマオシコガネ、通称『フンコロガシ』。
その語源となった古代エジプト語が、『スカラベ』です。
つまり、スカラベとは、フンコロガシ。

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このようにしっかりと壁画にも登場するのですが、古代エジプト人は、昆虫たちにも生命の神秘を感じたのでしょう。スカラベは、聖なる甲虫とされていたようです。
ファーブル昆虫記でもおなじみのスカラベ・サクレは、フランス語で聖なる甲虫。彼らの生態は、とても興味深く、人類は時代を超えてその神秘に魅せられてきたのです。

皆さんは、スカラベがフンを転がす姿を見たことはありますか?
スカラベは、馬や牛、羊のフンを食べて育つ、糞虫の一種です。
中でもスカラベは、フンにたかってその場で食べるのではなく、ノコギリのような前足でフンを切り取り、後ろ足で器用に転がしながら巣穴に持ち帰り食べるという、ユニークな性質をもっています。
子どもを産むときも、糞玉の中に卵を産み付け、生まれた子どもはそのフンを食べ成長し、外に出てくるそうです。

その様子を見た古代エジプト人は、スカラベが転がす糞玉に、天空を移動していく太陽の姿を重ねたのです。
そして、糞玉から生まれてくる新しい命に、再生のパワーを感じたのです。

どこからともなくスカラベが転がしてきた糞玉は、やがて彼らの巣穴へと導かれて消えていく。
そして新しい命となって巣穴から出てくる。

まるで朝日が昇って、沈んでいく様のようだと感じ、その太陽をせっせと運ぶスカラベを、神聖な存在としていたのです。
そして、エジプト神話に登場する【ケプリ】という神は、スカラベの頭部を持つ太陽神です。
夜に沈んだ太陽は冥界を通り、再びケプリとなって天空の女神ヌートから発生する。
ケプリとは、再生や発生を象徴する、朝日の神様なのです。
ですから、埋葬されるミイラの胸には、死者の復活を願って、ハヤブサなどの翼をもつスカラベの護符が置かれます。
ツタンカーメン王の墓から発見された数々の首飾りにも、太陽を掲げたスカラベの姿がみてとれます。

生命力の象徴でもある朝日、そしてその朝日から生まれ出るものとしてあがめられたスカラベ。
命そのものともいえる、強いパワーを感じるシンボルですね。