◇◆ アンク 永遠の命のシンボル ◆◇

 

皆さまは、アンクという言葉をご存知でしょうか。
なかなか耳慣れない言葉かもしれませんが、形を見たら、どこかで見覚えがあると感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。

古代エジプトの壁画には、神やファラオ(王)や、神格化されたような動物など、生き物がたくさん描かれていますが、同時に、植物や道具など、こういうときには多くこれが描かれるというものがあります。
これらが全て、象徴です。
大事な意味のある、シンボルとして描かれているのです。

中でも重要なもののひとつが、アンク。
【命】の象徴です。

そもそも【アンク】という言葉は、古代エジプトで「生命」あるいは「生きること」を意味する言葉として使われていました。
かの有名なファラオ、ツタンカーメンの名にも Tut-ankh-amen の ankh の部分にこの文字が用いられていますが、それを表わすヒエログリフをかたどったものが、護符(お守り)や装飾の図柄としてよく使われているのです。
一説によると、アンクのヒエログリフは男性原理(T字)と女性原理(卵)の結合のシンボルであり、ゆえに生命のシンボルとされるようになったのだという話もあります。

命そのものや、生きることを意味するので、長寿を表すものでもあります。
つまり、永遠の命。
ですから、ファラオは、このアンクを必ずといっていいほど持っているのです。

 

◇◆ 時代を超えるシンボル ◆◇

 

古代エジプトでは、アンクを持つことで永遠の命を願うお守りとしました。
また来世でも出会える、そして死んでも魂は生き残り、命が永遠に受け継がれていく…そのようなつながりを示すのがアンクです。
王の権力の象徴として、子孫繁栄によって自分の魂とDNAが輪廻の輪をめぐり、何千年経った時も自分のDNAを受け継いだ子供たちが生きているようにと願ったのでしょう。
印象的なのは、十字架の上に輪がついているように見えるその形。
輪は人と人との縁や、つながり、コミュニケーションを表します。
過去世から未来へ…それもまた、永遠の命。
ですから、王だけでなく、古代の神官たちも神様も、皆アンクを手にしているのです。

これはその後、エジプトにおけるキリスト教信者【コプト】たちの中でその形が十字架に似ていたためか尊重され、キリスト教のシンボルとしても生き続けました。
エジプト十字(エジプトじゅうじ)とも呼ばれ、十字架の頭に輪がついているような形は、クルクス・アンサタつまり、取っ手のついた十字架として、大切にされてきました。
どの時代においても、宗教や文化が変化してきても、常に人気が高いシンボル、それがアンクなのです。